運送事業者が簡単に黒字に向かえる経営のノウハウについてお伝えします。
運送会社が黒字経営をするには、まず輸送原価を知る事が初めの一歩です。
前回の記事「運送事業の黒字への道|見える化が初めの一歩」で、輸送原価の確認方法を解説しております。
まずは自己分析を行い、簡単にできて効果が高い取り組みから優先的に進めていきましょう。
利益と“収益性”の違いを理解しておこう
輸送原価の出し方(前回記事)で7つの原価を確認したら、次は「収益性」を確認しましょう。
ここで重要なのは、売上から原価を引いた利益だけを見るのではなく、収益性を理解しておくことです。
例えば、1台のトラックの1日の売上が40,000円で、輸送原価が38,000円だとします。
この場合、利益は2,000円となります。これは営業利益です。
現時点では、可もなく不可もない評価と言えるでしょう。
では、この輸送原価を可視化したうえで収益性について見ていきましょう。
4tトラックの原価モデルと収益性の考え方
4t車を例に計算します。
リース料なしで1日の運賃が40,000円なら、約3%強の利益となります。
これが営業利益です。
しかし、実際の収益性は−7%弱となります。
つまり、見た目は黒字でも、実態は赤字の運行ということです。
この状態では、
運賃の値上げをするか、撤退検討するかの2択になります。
なぜ−7%になるのか?
それは、トラックは“ただ”ではなく、
いずれ必ず買い替え(償却)が必要だからです。
▼ 輸送原価の内訳(償却なしの場合)

4tウィング車のリースと償却の考え方
4tウィングの今の新車は約1,000万円だとします。
月のリース料は20万、25日稼働だと1日8,000円の原価になります。
つまり、5年リース期間は毎日8,000円かかり、リース満了後の5年間は0円で使うことになります。
そうすると、10年間平均のトラックのリース料(償却)は月10万、25日稼働だと1日4,000円となります。
運送事業の収益性とは、10年使った時の平均した利益を指し、
トラックの償却の有無で利益が左右する状態を固定化した利益率を収益性と定義しています。
▼新車リース時と10年平均償却時の比較
以下は、新車をリースした場合(左)と、10年平均償却額で見た場合(右)の原価計算を、左右に並べて比較したものです。
・新車5年リース車両費

・ 10年平均償却率

表面上はどちらも同じ40,000円の運賃ですが、実際の収益性は大きく変わります。
このように、リース支払いが終わった車両で黒字運行できていても、車両を入れ替えた瞬間に赤字になるというケースがあります。
その場合、
- ・運賃交渉を行う
- ・生産性(稼働率・回転率)を上げる
いずれか、もしくは両方のアクションが必要になります。
最低でも、10年平均の償却額(リース料相当)を考慮しても赤字にならない水準で、運賃設定・受注をしなければなりません。
運送会社の生産性の上げ方について
運送会社の生産性の上げ方はいくつかあります。
稼働率向上、1日2運行、往復積載運行など、皆さんご承知の通りかと思います。
トラックは“稼働してなんぼ”の世界ですので、
とにかく売上のトップラインを上げることに注力している会社で、赤字の会社は少ないです。
しかしその一方で、原価を正しく把握せず長距離輸送を続け、「売上はあるのに赤字」という会社もあります。
まず必要なのは、まずは原価を可視化することが重要です。
その上で、さらに利益率を上げるために、原価率を下げる方法として販管費率を下げるという考え方があります。
見落とされがちな“もう一つの生産性”
運送事業者がほとんど気が付いていない、もう一つの生産性の上げ方について解説していきましょう。
それは、販管費率を下げる事で利益を上げるという考え方です。
この取り組みに着手している企業、または事業計画に組み込んでいる企業は、ほとんど見たことがありません。
稼働率以外にも生産性の上げ方はあります。
この点を理解するだけで、同じ運賃でも最終利益は大きく変わります。
日本全国の運送会社の利益率を上げることは、実はそれほど難しくありません。
運送会社が簡単に利益率を上げる方法
間接コスト率を下げる=販管費率を下げる方法
さて、皆さんの会社の間接コスト率はいかがでしょうか?
すぐに答えられない方は、正直なところ90%以上かもしれません。
運送会社が利益を増やしながら事業を拡大していくには、トラック台数を増やすことが不可欠です。
そして、利益率を上げるための事業拡大には、2つの重要なポイントがあります。
ここを理解していれば、黒字成長は間違いありません。
① トラック台数を増やすこと
そして間接コストを増やさずに増車すること
この理屈がわかると、下記の関係に気づくはずです。
・台数を増やせば黒字が進む
・ 台数を減らせば赤字になる
▼具体例
| 売上 | 間接コスト | 間接コスト率 | |
|---|---|---|---|
| A | 2,000万円 | 400万円 | 20% |
| B | 3,000万円 | 400万円 | 13% |
同じ運賃でも、利益率が7%違うということです。
事業計画を立てない経営者は…危険です。
② 設備投資で一時的に赤字になることを理解する
そしてファイナンスで制御する
新車を5年でリースし、償却する場合、導入時に赤字期間が発生します。
しかし、その赤字期をファイナンスでコントロールできれば、
利益率を7%上げることは難しい話ではありません。
夢ではなく、計画次第で“すぐに実行できる”戦略です。
③ おまけ:設備投資による赤字の解消のしかた
運送事業を黒字成長させるには、設備投資は付き物です。
生産性を上げることも目的の一つとして、増車・拡大をしていかなければなりません。
その際のポイントとして、
など、複合したファイナンスの技術で販管費比率の低減に努め、黒字拡大を狙ってください。
次回:事業計画の作り方
次回の記事では、事業計画の作り方について解説します。
ファイナンスの相談、事業計画の相談など、グリーンベルグループは無料でお客様の成長に寄り添います。
お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

